てんかん、発達障害、筋疾患、中枢神経系感染症、先天異常や周産期障害による中枢神経障害等々幅広い疾患を対象として診療しています。
我々のグループは橋本清先生(現・小児科名誉教授)が1969年に小児科に「神経外来」を開設されたことを創業として50有余年の歴史と伝統があります。とくに本学全病院小児科で総数4500人超にも上るてんかん患児の診療には定評があります。橋本先生は1998年日本小児神経学会第40回総会の大会長を務められました。その後藤野修先生と藤田武久先生が中心となられ藤野先生は2010年日本小児神経学会第52回関東地方会会長を務められました。現在は現役最年長の川上康彦(武蔵小杉病院)が中心となり、診療・教育・研究活動を行っています。川上も先人を受け継ぎ2017年日本小児神経学会第66回関東地方会会長を務めました。日本医科大学は日本小児神経・日本てんかん両学会の専門医研修施設認定を受けており、小児科専門医取得後、両方の専門医を取得出来るよう指導します。研究はてんかんの基礎・臨床研究を得意としますが他分野も盛んです。学外の施設との共同研究交流も活発です。
現在の主な研究
- 小児期のけいれん患児の脳波学的・放射線学的臨床解析(予後の検討など)
- 中枢神経系疾患(とくに髄膜炎・脳炎)患児の脳脊髄液中脳内酸化ストレス変動の検討(薬学関係他施設との共同研究)
- てんかん発症における脳内酸化ストレスの意義・てんかんモデル動物に対する抗酸化剤投与の影響の研究(他施設との共同研究)
- 筋ジストロフィーモデル動物に対する遺伝子治療の基礎研究(学内共同研究)
- 発達障害児の臨床的検討、特に有効な治療介入について
代表的研究成果
各研究班の数多くの研究発表の中から、代表的なものを解説付きで掲載しています。
- Kawakami Y, Murashima YL, Tsukimoto M, Baba A, Miyatake C, Okazaki T, Takagi A, Koizumi S, Kojima S, Fujino O, Itoh Y. Significance of Glutathione-Mediated Scavenger Potency in the Development of Seizure Susceptibility in the EL Mouse Brain. J Pediatr Epilepsy 2015; 4: 67-71.
自然発症てんかんモデルELマウスのてんかん原性獲得に脳内酸化ストレスが密接に関与していることをフリーラジカル消去剤であるグルタチオンの動態から実証した研究。ひとつ下の研究の理論的根拠になった。
- Baba A, Kawakami Y, Murashima YL, Saito K, Itoh Y. Effects of edaravone on hippocampal antioxidants in EL mice. J Nippon Med Sch 2016; 83: 100-106.
ELマウスにフリーラジカル消去剤として臨床で使用されているエダラボンを投与すると脳内酸化ストレスの低下とともに脳波・症状ともに改善することを示した。てんかん治療に新たな選択肢を提供。
- Kawakami Y, Fujii S, Ishikawa G, Sekiguchi A, Nakai A, Takase M. Valproate-Induced Polycystic Ovary Syndrome in a Girl with Epilepsy: A Case Study. J Nippon Med Sch 2018; 85: 287-290.
比較的周知の事実であるが臨床実地で経験することは稀とされている抗てんかん薬(バルプロ酸)内服に起因する多嚢胞性卵巣症候群の症例報告。
- Kawakami Y, Saito K, Itoh Y. The Developmental Effects of Isoflavone Aglycone Administration on Early Chick Embryo. Interdiscip Toxicol. 2018; 11: 236-239.
妊娠雌ニワトリにイソフラボンを与えると胎児に奇形が発生することを報告。サプリメントの安易な使用に警鐘を鳴らす基礎データを提供した。
- Kawakami Y, Murashima YL, Tsukimoto M, Okada H, Miyatake C, Takagi A, Ogawa J, Itoh Y. The roles of dominance of the nitric oxide fractions nitrate and nitrite in the epilepsy-prone EL mouse. J Nippon Med Sch 2021; 88-4 掲載予定
先行研究を継続し、ELマウスのてんかん原性獲得過程でNOの分画であるNO3とNO2の脳内濃度の優位性が逆転することを初めて示した。